SST(ソーシャルスキルトレーニング)ということばは、ここ数年で一気に世の中に広まっていきました。ソーシャルスキルを簡単に言えば、「環境や人と上手に関わっていく力」となります。一方で、似たことばにLST(ライフスキルトレーニング)ということばがあります。ライフスキルは「生きていくために必要な力」となります。「そもそも、コミュニケーションや対人関係が苦手な人にトレーニングをするのは正しいことなのか…」と思う人もいるため、どちらの内容を重視してトレーニングしていくべきかは専門家の中でも意見がわかれます。また、別の力ではアカデミックスキル(理解や表現、読み書き、計算など)があります。
SSCでは上記のスキルをこのように位置づけています。
①ライフスキルを学ぶ=生きていくための力を学ぶ
②ライフスキル+アカデミックスキル=上手に生きていく力を学ぶ
③ライフスキル+アカデミックスキル+ソーシャルスキル=周囲の人と上手に生きていく
どの形が適切かはその人の特性や能力、生活環境によって変わります。ただ、SSCでは社会の中で様々な人と関わりながら生きていく世界を望む参加者、または保護者が多いため、③に力を入れてトレーニング内容を組み立てています。そして、多くのスキルを身につけていかなければならないため、「ソーシャルスキルズクラス」という名前が生まれたのです。
どの時期に何を学ぶことが適切なのか、明確な指標は存在しません。なぜかと言えば、発達や成長は人それぞれで違うからです。では、どのように学ぶ内容を決めていけばよいか、それはその人が持っている力を正しく知り、そしてどの未来を目指して歩みたいかを一緒に考えることから始まります。
人生という長いマラソンに参加するためには「ゴール」(目印)が必要です。どこを目指して走っているかわからずに走るのは、とてもつらく大変なことです。だから1年先の未来、そして数年先の未来を、参加者や本人と一緒に毎年考え、そのゴールに合わせて学ぶ内容を選んでいきます。ゴールは年々変わることもあります。変わってもいいのです。それこそ成長している証だからです。SSCには、絶えず変わるゴールに対して柔軟に寄り添い、学びを提供できる力があります。だからこそ教材はその人に合わせて作る必要があり、それこそがSSCの強みになっているのです。
SSTの指導をする上で最も大切にしているのが自己理解です。自分のことをよくわかっていなければ、自分の力にふさわしい解決法を考えることはできません。しかし、自分一人で自分のことを理解することはとても難しいことです。たとえば、「ぼくは優しいよ」と言っている人がいます。その人が本当に優しいかどうかはわかりませんが、周囲の人が「あの人は優しい人です」と言っていれば、おそらくその人は優しい人なのだと思います。
自己理解とは「他者評価」の集まりなのです。だからこそ、SSCではクラスの中で見えてきたその人の考え方や感じ方を上手にフィードバックして、自己理解につながていきます。自分の強みだけでなく、弱みも上手に受け止めることができれば、これから進む場所もあえて自分に適していない場所を選ぶことは少なくなり、その結果、失敗も減るのです。
自己理解の強化はどの年齢でも常に意識して指導にあたります。限られた時間の中で2人の指導者から多くのフィードバックを得ることができる、これもSSCの強みです。
SSTの指導には様々な形があります。それぞれの形には良さもあれば難しさもあります。SSCでは、指導形態が一番難しいとされる「複数の指導者によるアプローチ」を採用しています。ソーシャルスキルは「人が人に影響を与える」ことで学びが深まります。教材はそのきっかけを与えるツールです。2人の指導者が様々な角度から考えや感じたことを伝え、そして参加者同士でも話し合うことで、学びはより深みを増します。
ただ、指導者の考え方や価値観を常に同じラインに保つ必要があるため、SSCは指導の質を保つために、指導者同士で日々たくさん話し合い、互いのことをよく知る努力をしています。